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『ヴェネチア風物誌』 アンリ・ド・レニエ、(訳)窪田 般彌

評価:
アンリ・ド レニエ
沖積舎
¥ 3,024
(2005-09-30)

存在自体が美しい本、というのがある。絵や文章はもちろん、余白さえも美しい本。(中略)アンリ・ド・レニエの『ヴェネチア風物誌』も、まさにそういう本だと思う。全編、きわめて詩にちかい散文で、言葉が次々と紡ぎだすイメージの美しさには、目眩さえしてしまう。
(『泣かない子供』より)

江國香織さんのエッセイ『泣かない子供』の中でこんなふうに素敵に紹介されていて、ずっと読んでみたかった本です。
19世紀末のヴェネチアの風景が、きらきらした水の光や匂いとともに立ち上ってくるような美しさ。この街にとり憑かれたというフランス詩人ド・レニエさんがしたためたふしぎに臨場感のある散文を読んでいると、するりとこの時代のヴェネチアに旅立ってしまえるのです。
あの迷宮のように曲がりくねった路地、キャフェ・フロリアンの優雅なざわめき、街じゅうに鳴りひびく鐘の音・・・そして、陽気な船頭が櫂をあやつるゴンドラ――
あかるくまどろんだ夏の昼間のヴェネチアはもちろん、「ガラスの河さながらの」夜のヴェネチア、「濃霧につつまれて乳色一色となる」冬のヴェネチアの描写がことさらすばらしく、文章を読みながらうっとりと酔いしれてしまいました。

色という色は入り混って、変わりやすい透明な一色となる。この地こそは、まさに妖術と魔術と幻覚の土地ではないか? (『幻覚』より)

いつか然るべき夜に、(中略)私は額縁の高みを上りつめ、彼の手を取るだろう。そして、二人して肩を並べ、まるで二人連れの亡霊のように何なく壁を通り抜けて、ヴェネチアの町を歩き廻るだろう、行き交う人の多いヴェネチアではなく、過ぎた日のヴェネチア、夜の闇と月とが白と黒の衣服をまとわせる町を。(『肖像』より)

夜眠る前に少しずつ読み進めた美しい本。
たぷんたぷり・・・たぷんたぷり・・・まるでゴンドラに揺られているような心地よさ。
マクシム・ドトマさんの詩情ゆたかな挿絵の数々もすばらしいです。

(原題『ESQUISSES VÉNITIENNES』)
Author: ことり
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