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『シンデレラの罠』 セバスチアン・ジャプリゾ、(訳)平岡 敦

評価:
セバスチャン・ジャプリゾ
東京創元社
¥ 777
(2012-02-28)

わたし、ミは、火事で大火傷を負い、顔を焼かれ皮膚移植をし一命をとりとめたが、一緒にいたドは焼死。火事の真相を知るのはわたしだけだというのに記憶を失ってしまった。わたしは本当に皆の言うように大金持ちの伯母から遺産を相続するというミなのか?死んだ娘がミで、わたしはドなのではないのか?
わたしは探偵で犯人で被害者で証人なのだ。
ミステリ史上燦然と輝く傑作。

パリ、フィレンツェ、ニース――そして、カデ岬の別荘。
記憶喪失の「わたし」が、うしなわれた過去を、アイデンティティを探っていくという精巧で隙のないサスペンスミステリーです。
愛憎からみ合う女どうしの濃密で繊細な関係。きらめく陽光がうつし出すものうさとエレガントさ。20歳の娘・ミシェル(ミ)とドムニカ(ド)、後見人のジャンヌ、靴づくりで財をなしたミドラ伯母さん・・・女たちの鬼気迫るかけひきがそれぞれの孤独な心を際だたせます。

「わたし」はいったい誰なのか。どちらがどちらを殺したのか。
ついに真相をつかんだかと思ったらひらりひらりとはぐらかされる、そのくり返し。
なんだか、合わせ鏡の迷宮にまよい込んでしまったみたい・・・。閉じ込められた世界ははてしなく広がっているのに、どこにもけっしてたどり着かない。そこにうつっている「わたし」は、ミなの?それともドなの?
そうして「シンデレラ」の一語でつながれたラストの締めくくりとおとぎ話のような冒頭は、‘真相’さえも闇にほうむり去ってしまいます。

ああ、二重三重に仕掛けられた罠に眩暈がしそう。
深読みしようと思えばどこまでもできてしまう、そこが凄いし、そんな凄さがとても好みでした。(書かれたのは50年も前なのに斬新というのも凄い!)
たくみに操られた時間と視点が真実をくるくると反転させる・・・結局のところ「わたし」はどちらだったのかしら・・・読み手はまったく途方に暮れるしかないのです。

(原題『Piège pour Cendrillon』)
Author: ことり
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