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『夜のサーカス』 エリン・モーゲンスターン、(訳)宇佐川 晶子

評価:
エリン モーゲンスターン
早川書房
¥ 2,835
(2012-04-06)

夜だけ開く黒と白のテントのなか、待っているのは言葉を失ってしまうようなショウの数々。氷でできた庭、雲の迷路、優雅なアクロバット、ただようキャラメルとシナモンの甘いにおい・・・しかし、サーカスではひそかに熾烈な闘いがくりひろげられていた。
若き魔術師シーリアとマルコ。幼いころから競い合いを運命づけられてきた二人は、相手に対抗するため次々とサーカスに手を加え、魅惑的な出し物を創りだしていく。しかし、二人は、このゲームの過酷さをまだ知らなかった――世界で絶賛された幻惑とたくらみに満ちたデビュー作。

「そのサーカスはいきなりやってくる」――
郊外の野原に高くそびえるテントをかまえ、夕暮れの風にほのかにキャラメルの匂いがただよい始めたら、もうすぐ開幕の合図。忽然と現われ、夜だけひらくという喩えようもなく豪奢で魅惑的な夢のサーカス<ル・シルク・デ・レーヴ>。
私はすっかりこのサーカスの魔法にかけられ、一瞬で、瞳をきらきらさせた子どもにもどってしまいました。お話のゆくえに胸を躍らせ、夢中で本の頁をめくる、めくる、めくる・・・ただもう、とにかく楽しくて。

物語は、時と場所を交差させながら、こまぎれの章立てで進んでいきます。
それはまるで<ル・シルク・デ・レーヴ>のたくさんのテントをひとつひとつ堪能しながらめぐっていくかのよう。物語のあいまには、二人称で耳元に囁きかけてくる小さな章がまぎれ込ませてあって・・・魔法が織りなすまばゆく幻想的な出し物をいままさにこの目でみている、私はいつしかそんな宝物のように愛おしい感覚につつまれていたのです。
光と色彩のシャワーが降りそそぐなか描かれる、老練の魔術師たちの契約にしばられたシーリアとマルコの数奇な運命。風変わりなオーナー、謎めいた灰色のスーツの男、捉えどころのない軽業師や占い師、サーカス生まれの赤毛の双子、サーカスに憧れる農場の少年など・・・登場人物たちが鮮やかに頭のなかで像を結び、美しい<氷の庭>や<鏡の廊下>を行き交うのもとても楽しかった。

「この物語がほしい。きみの物語が。われわれをこの場所へ、この椅子へ、このワインへ連れてきた物語だ。」

五感を心地よくくすぐってくれる世界観と、「物語」をめぐるおとぎの国にまよい込んだような浮遊感。
ふわりふわり・・・本をとじても醒めない夢みごこち。
ああ、この素敵な魔法がこのままとけなければいいのに。

(原題『The Night Circus』)
Author: ことり
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