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『たのしいムーミン一家』 トーベ・ヤンソン、(訳)山室 静

「ムーミン童話全集」の第2巻。
ながい冬眠をおえ、ムーミントロールたちの春の目覚めからはじまる物語です。
ムーミンたちは山で黒い帽子をひろいます。ところがそれは、中にはいったものをおかしなものにかえてしまう、ふしぎな帽子だったのです・・・!

勇敢なムーミントロール、おくびょうなスニフ、おしゃれなスノークのおじょうさん。気のいいパパに、おもてなしが大好きなママ、自由と孤独を愛するスナフキン・・・黒い帽子をめぐる騒動のなかで、物語の根底には彼らのやさしい思いやりが流れています。
そしてフィンランドの冬がながく厳しいぶん、ムーミン谷のみんなは春から夏にかけてのみじかいきらめきの季節をめいっぱい味わいつくそうとするかのよう。みずみずしい季節の表情が繊細に描かれていて、とても素敵です。木苺のジャムをぬった黄色いパンケーキ、ほしぶどう入りのプディング、子ぶたの形の砂糖菓子など、お話を彩る甘い食べものもおいしそう。

ムーミン谷の森は、地ぼたるでうずまるし、海もきげんがわるくなりました。空には、なにかかなしいけはいがただよい、黄色い大きなとりいれ月のお月さまがのぼってきました。
ムーミントロールは、こうした夏のさいごの時期が、いつでもいちばんすきでした。――なんだか、そのわけはわかりませんでしたけれど。
風も、海も、ひびきをかえていました。空気には、あたらしいはだざわりがありましたし、木々は、なにかをまちうけるようにたっています。なんだかムーミントロールには、なにかふしぎなことがおこりそうに思われるのでした。
このうつくしい夏の終わりに、スナフキンはムーミン谷から旅にでます。「春のいちばんはじめの日には、ここへ帰ってきて、またきみのまどの下で、口ぶえをふくよ。」――ムーミントロールにそう約束して。
魅力的なエピソードたちが最後にはちゃんとまとまるストーリー展開も見事で、かわいいだけではなく、ほんのり清らかな余韻がのこります。

(原題『Trollkarlens hatt』)
Author: ことり
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