<< 『時のかさなり』 ナンシー・ヒューストン、(訳)横川 晶子*prev
『罪悪』 フェルディナント・フォン・シーラッハ、(訳)酒寄 進一 >>*next
 

『鞄の中身』 吉行 淳之介

自分の死体を鞄に詰めて持ち歩く男の話。びっしりついた茄子の実を、悉く穴に埋めてしまう女の話。得体の知れぬものを体の中に住みつかせた哀しく無気味な登場人物たち。
その日常にひそむ不安・倦怠・死・・・「百メートルの樹木」「三人の警官」ほか初刊七篇を含め純度を高めて再編成する『鞄の中身』短編十九。

時間の流れがふいにゆがんで、不穏にからみつく独特の世界。
淳之介さんの小説は、わるい夢をみているようなほの昏い空気感が好き。
冒頭に置かれた『手品師』、『家屋について』、『風呂焚く男』の3編がことさら私の気に入りました。美しく翳りを帯びた物語は、妖しくとろりと私を惑わせてくれます。

この文芸文庫版には、『出口・廃墟の眺め』、『鞄の中身』の短篇集2冊ぶんが収録されているそうで、本来の『鞄の中身』はこちらの本では後半7編――ごくごく短い掌編ばかり――がそれに当たるようです。とても短いのにこの完成度、ほれぼれしてしまいます。
Author: ことり
国内や・ら・わ行(吉行 淳之介) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -