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『ホテルカクタス』 江國 香織

評価:
江國 香織
ビリケン出版
¥ 1,575
(2001-04)

とある古びたアパート「ホテルカクタス」に住む3人、‘きゅうり’と‘帽子’と‘数字の2’の友情物語。
きゅうりは素直なスポーツおたく、帽子はお酒好きのハードボイルド、2は几帳面な役場づとめ。3人はそれぞれの性格や趣味をみとめあっていて、きゅうりのお部屋に集まり、日々いろんなことを話しあいます。

江國さんのこういうセンス、たまらないなあ。
きゅうりに、帽子に、数字の2!これほど風変わりな物語、読んだことがありません。なのに信じられないくらいすんなりと肌になじむ世界なのです。2は割り切れないことが苦手、なんてこまかな設定にもにんまりしてしまいました。
けれどもやがてホテルカクタスはとりこわされることになり、ほのぼのとした日常が、「約束」に終わってしまう少しせつないお話です。

ひいやりとしたぬくもり。
このアパートには、そんなちょっと矛盾したような空気を感じます。でもそれは、いつかどこかで触れたような空気でもあるのです。
哀しさとなつかしさが凝縮された、果実みたいな大人のための童話。
佐々木敦子さんが描かれた挿画の階段、白壁、鉄の手すり・・・無機質なつめたさやゆがんだ感じ、光のさし加減も、このお話にすばらしく合っているのでした。

その風景は、でも2と帽子の目に、来たときとは全然ちがうふうに映りました。
はじめて来た場所が、特別になり、すてきな思い出になる瞬間の、江國さんのこんな描写が好き。
Author: ことり
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