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『自分の羽根―庄野潤三随筆集』 庄野 潤三

小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め暮らしと文学をテーマに綴られた九十篇。
多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ四十歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。

ゆったりとしたなかに頑健な筋がきちんと通っている、そんな印象のエッセイ集。
ある男の子の夏休みの宿題や、息子さんとの帰り道に出くわした小動物の死骸たち、山茶花の花が好きなわけ、「書く」ということについて・・・。日常のささやかな思いから作家論まで、柔らかで知的な文章に心がみたされるのを感じます。
物事にそそがれたやさしく真摯なまなざし、庄野さんの感性が私はとても好き。
あたりの空気がしっとりと色づきそうな一冊でした。

家風というものは、見る人の心に「あわれ」と映るものであるのがいい。(中略)
朝、いちばんに起きた者が次々と家族を起して、それぞれが朝ご飯を食べて、子供は学校へ出かけ、父親は自分の仕事に取りかかる。そこまでの段取りは、近所の、同じくらいの年恰好の子供のいる家庭と、別に大きな違いがあるわけはない。
だが、大きな違いのないところにも、はっきりした「家風」の差というものは生じるのである。それは、ひとつひとつ取り上げれば、実に些細なことであるが、私の家の朝の始まりかたとお隣りの家の朝の始まりかたには、確かにこれは別々の家族だと思わせる何かがあるに違いない。
Author: ことり
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