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『野溝七生子というひと―散けし団欒』 矢川 澄子

先日読んだ小説『山梔』で、はじめて野溝七生子さんにふれました。
この本は、生前親交の深かった矢川澄子さんが天国の「なァちゃん小母さん」に宛てて書かれた書簡文学です。

野溝さんは森鷗外の熱心な研究者であり、娘の茉莉さんが彼女に「これほどに鷗外を理解してくださってるひとにはじめて会った」と言ったというエピソードが紹介されています。「鷗外のことならば安んじてあなたにおまかせできるけど、でも、パッパはあげられないわよ」とダメを押された、なんてことも。
おなじように威厳ある‘父の娘’として生まれた森茉莉さんや由宇阿字子(『山梔』の主人公)との違いを考察されている文章も興味深く読みました。

野溝さんは歌人の鎌田敬止さんと表札をならべ、ひとつ屋根のしたに暮し、彼と別れた後は亡くなるまでの数十年ホテル住まいだったそうです。当時としてはかなり破格だったはずの彼女を矢川さんはあくまで親しみをこめて、やさしく語りかけるように描きだしています。
ご自身の別れた夫(澁澤龍彦さん)の面影をも文章ににおわせながら・・・。
なァちゃん、わたし、あなたのおかげで、女のひとのなかのいつまでも渝らないもの、たくさんたくさん見せていただいた。いいところもわるいところも、――理知のひとと無垢のひととの絶妙なバランスのあいまを縫ってときどき顔をのぞかせる「心の鬼」のありようも。
野溝さんはまぎれもなく、‘不滅の少女’矢川さんの精神世界をつくり上げた人びとの一人だったのでしょうね。いまごろは天国で、思い出ばなしに花を咲かせているかしら・・・そんなことをふと思ってみたくなります。
Author: ことり
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