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『春待ち海岸カルナヴァル』 木村 紅美

自分には、愛される価値なんかない。そう思って、家業のホテルをきちんと守ってきた39歳未婚の紫麻。そこに現れたのは冴えない中年男。なぜか紫麻の足にぴったりのバレエシューズを携えて・・・。
真面目で一所懸命、だからこそときめきからは遠ざかってしまう。そんな女性のまだ恋ともつかない心のさざなみを温かく描いた長編。

海岸のそばの小さなホテル「カルナヴァル」。
このホテルを切り盛りする39歳の紫麻は、まじめで控えめで恋愛にもおくてです。アイルランド人の夫と離婚をし、小学生の娘をつれて出戻ってきた妹とは対照的。
ある日、そんな紫麻にも淡い恋がおとずれて――。

妄想をふくらませたり、メールを待ちわびたり。そのくせ自分からは動かない。
彼女の片想いは子供じみていて、なんだかじれったいな・・・ほんと言うと私は少し呆れぎみに読んでいました。家族やホテルのことを考えいっしょうけんめい働いている紫麻は、控えめながらもとてもしっかり者だから余計にそう感じられるのかも。
でもこの不器用な恋もようを、かわいらしいエピソードやホテルを行き交う人びとのあたたかさがつつんでくれているのがすごくよかったです。私は恋愛小説としてよりもそういう繊細なディテイル・空気感のほうを楽しんでいたみたい。
しずかな重低音で流れるジャズの音色・・・
アイルランドの妖精にまいばんミルクをあげるメイちゃん・・・
お天気のいい日に浜辺でほおばる「朝食バスケット」・・・
ちょっぴり湿っぽい思いもフワ〜っとどこかにはこんでいってくれるような、お話をわたっている爽やかな風がここちよかった。波音がきこえるこんなやさしいホテルに私も泊まってみたい、そう思わせる物語でした。
Author: ことり
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