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『御馳走帖』 内田 百

評価:
内田 百けん
中央公論社
¥ 926
(1996-09-18)

朝はミルクにビスケット、昼はもり蕎麦、夜は山海の珍味に舌鼓をうつ、ご存じ食いしん坊百寮萓犬、幼年時代の思い出から戦中の窮乏生活、また知友と共にした食膳の楽しみに至るまで、食味の数々を愉快に綴った名随筆。

ふふふ、いいなあ・・・大好き。一文一文かみしめて、にっこりしながら読みました。
油揚げの「じゆん、じゆん、じゆんと焼けて、まだ煙の出てゐるのをお皿に移して、すぐにお醤油をかけると、ばりばりと跳ねる」ようすだとか、「レモンの汁が沁みてゐる」しっとりとしたおからを食べてすぐ「シヤムパンが追つ掛けて咽へ流れる」ここちよさなど・・・こだわりの食事やお酒でいきいきと彩られた随筆集。

ヴァラエティに富んだ食事を手軽に楽しめるいまでは、なかなか味わえない種類の贅沢。ものがすくない時代だからこそ、その旨みはいっそうとくべつなものとしてうかび上がるのかもしれません。
日々の質素な食事から、たまの食堂車の楽しみ、愉快な交遊録や忘れられない食膳のお話などがどこかとぼけた風情で描かれてゆきます。
戦前、だんだんと食べるものがなくなってくると、せめて記憶の中からうまいものの名前だけでも探し出そうと‘食べたいものリスト’をつくられたりする百寮萓検△覆鵑凸しい方なんでしょう。
さはら刺身 生姜醤油
たひ刺身
かぢき刺身
まぐろ 霜降りとろノぶつ切り ・・・
つらつらと上げられていくこのリスト、いったんは終わるのに「ソノ後デ思ヒ出シタ追加」とつづいていくのがまた切なくも可笑しいのです。

百寮萓犬呂燭鵑覆詒食家とは少しちがって、自分なりの物差しでおいしい順番を大切にされたり、にぎやかなお膳を好んだりされた方だったのですね。気難しさのなかにふとのぞく愛嬌、お気に入りの酒肴にはとことん凝ってしまうという在りし日のお姿に心がなごみました。
Author: ことり
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