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『コラージュ』 アナイス・ニン、(訳)木村 淳子

近年フェミニズムの立場から再評価される作家の20篇からなる小宇宙の結晶。世界的に評価の高い『日記』に比肩する自伝的作品。

20の小さな物語のかけらたち。通して読んでみると、ひとりの孤独な女性の物語がうかび上がる、まさに「コラージュ」とよぶにふさわしい長編小説です。
主人公は、ウィーン生まれの女流画家・レナーテ。ヨーロッパからアメリカへ・・・彼女の風変わりな旅を描いたお話は、断片的な夢のようでもあり、孤独にとりつかれてしまう狂おしい恋の物語でもあります。
ウィーンの彫像のひとつによく似た青年・ブルースに恋をしたレナーテは、彼と自分とのあいだにけっして埋めることのできない溝があることを知ります。旅先で出逢った人びとと接するうち、人間は本来孤独なものであることを教えられてゆくのです。

たくさんの小さなエピソードがあるなかで、私は丘のふもとの洗濯屋さんのお話が一ばん好き。
背が高く、浅黒く、黒い眼をした洗濯屋。優雅な身のこなしと表情豊かな声をもつ彼は、乾いたシーツをレースのテーブル・クロスを扱うようにとり扱い、シャンペンのグラスを渡すようにおつりを渡す。彼の身の上話を聞きながら、レナーテが自身の古い思い出をよび起こす場面・・、それは美しい絵画のように心にのこりました。
洗濯伯を訪れるたび、古い箪笥の匂いが彼女を包んだ。母がオルゴールの中にしまってあった薔薇の花びらの匂い、磨かれたサンダルウッドの裁縫台の匂い、ウィーン風パイのヴァニラの匂い、ぴりりとした香料の匂い。父の煙草の匂い。それらが洗剤の匂いを圧倒してしまった。

(原題『COLLAGES』)
Author: ことり
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