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『神様』 川上 弘美

評価:
川上 弘美
中央公論新社
¥ 494
(2001-10-01)

昨日までの私にとって、川上弘美さんといえば『センセイの鞄』でした。
でもこれからは、迷いなくこの本をあげると思います。
この本も読まずにいままで川上さんを語っていたなんて、ごめんなさい。そんなふうに誰かにあやまってしまいたくなるくらい、好きになった本。へんな例えなのだけど、この本を好きじゃない人とは、私はきっとお友達になれません。

『神様』、『夏休み』、『花野』、『河童玉』、『クリスマス』、『星の光は昔の光』、『春立つ』、『離さない』、『草上の昼食』。一見ばらばらのお話がつまった短編集。
でもじつは、短編それぞれの「わたし」はおんなじ人なんだなあ、
読んでいるうちにそれが分かってくるしくみ。
そしてそれが分かるとむしょうに嬉しくなるのでした。
だって、こんな夢みたいで嘘みたいなできごとが、ばらばらの‘世界’で起こるより、おんなじ‘世界’で起こったほうがぜったい楽しいもの。

3つ隣の部屋に住むくまにさそわれて散歩に行ったり、梨もぎで3匹の小さな毛むくじゃらと出逢ったり、5年前に死んだ叔父さんとおしゃべりしたり。河童や壺の住人や人魚が、なにげなく登場してはさりげなく馴染む不思議な日常、四季折々。
そして彼らが交わす会話のひとつひとつが、すごくいいんです。
「あの」
とくに、『神様』のくまが好き。
このお話は、何度も何度も読み返してしまいました。
「抱擁を交わしていただけますか。親しい人と別れるときの故郷の習慣なのです。」

梨畑のあの子たちは、今年もあらわれるのかしら。
いまごろカナエさんは。故郷のくまはどうしているかしら。
本のなかのみんなが、本を閉じた瞬間から、ほら、もう恋しい。
Author: ことり
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