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『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』 コルタサル、(訳)木村 榮一

夕暮れの公園で何気なく撮った一枚の写真から、現実と非現実の交錯する不可思議な世界が生まれる「悪魔の涎」。薬物への耽溺とジャズの即興演奏のうちに彼岸を垣間見るサックス奏者を描いた「追い求める男」。斬新な実験性と幻想的な作風で、ラテンアメリカ文学界に独自の位置を占めるコルタサルの代表作10篇を収録。

粒ぞろいのアンソロジー『短篇コレクション』のなかでも、私の一ばんのお気に入りだった『南部高速道路』。これを書かれたフリオ・コルタサルさんのほかのお話を読んでみたくて手にとった本。

日常的なお話を読み進めていくうちに、いつからか、どこからか、非日常がまざりあい・・・ゾクゾクと胸がざわめいた私です。
ある小説を読んでいた男が、いつのまにかそのなかの登場人物になっていたり(『続いている公園』)、ある写真を眺めている男が、いつのまにかその写真の人物から眺められていたり(『悪魔の涎』)、観劇をしていたお客が、いつのまにかその劇の役者として登場することを強いられたり(『ジョン・ハウエルへの指示』)――・・・
「幻想」ということばでひと括りにするのもなんだかためらわれるくらい、なんともいえない魔力のある世界観なのです。虚実のあわいをぐらんぐらんと振り回される快感、突飛なできごとに戸惑いながらも惹きつけられる危うい心地・・・。
表と裏、内と外、夢と現実。コルタサルさんの書かれる世界はあらゆる境界があやふやで、それらが地続きの一世界として存在しています。
‘いつのまにか’まぎれ込んでいる、まさかの世界たち。
怖い夢をみて、ベッドのうえでぺたりと座り込んでいるような・・・そんなぼうーっとした余韻がのこる、奇妙で、混沌と不安な短篇集でした。
Author: ことり
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