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『短篇コレクション供戞 癖圈肪嘸 夏樹

池澤夏樹さんが編まれた「短篇コレクション」の第2巻。
こちらにはヨーロッパ圏で書かれた短篇ばかりが集められています。(『短篇コレクション』はヨーロッパ以外)

霞のかかった童話めいた物語『おしゃべりな家の精』、大人の世界に踏みだす少女の哀しみ『ローズは泣いた』、人間の謎を上質なミステリーのように仕立てた『芝居小屋』、ちらばった硝子片からもとの花瓶を想像するような『日の暮れた村』など、すてきな短篇がたくさん収められているなかで、もっとも私が気に入ったのは、『トロイの馬』という一篇。
酒場でのワンシーンを描いた物語なのですが、そこでは大人たちにまじって一頭の馬がお酒を飲んでいるのです。男と飲んでいる女性に「私とお酒を飲みましょうよ」と誘う馬。あんまり自然にとけ込んでいるものだから、読みながらこの上なく楽しい気分になってしまいました。後ろ脚で優雅に立ち上がったその尻尾には紫のリボンが結ばれていたりするのにも。
「あなた方、私が酔っぱらっているとお思いなんでしょう?ちっとも酔ってませんよ。ちいっとも」
でもこの男女にとっては馬のことなんてどうでもよくって、自分たちの話に夢中です。シャルロット叔母さんにお金を借りられるかどうかのほうが大切なのです・・・。
馬のキャラクター、男女の会話。この物語のへんてこりん度合いがたまらなく好き。

良質な短篇小説とは絵画のようなものだなぁ、とよく思います。
たとえば一まいの絵をみて、描かれているものから想像できる物語に思いをめぐらせることに似ている・・・そんな気がするのです。
物語の入り口から出口まで、なにを語り、なにを語らないか。それぞれの作家さんの技が光っています。

『おしゃべりな家の精』 アレクサンドル・グリーン
『リゲーア』 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ
『ギンプルのてんねん』 イツホク・バシェヴィス
『トロイの馬』 レーモン・クノー
『ねずみ』 ヴィトルド・ゴンブローヴィチ
『鯨』 ポール・ガデンヌ
『自殺』 チェーザレ・パヴェーゼ
『X町での一夜』 ハインリヒ・ベル
『あずまや』 ロジェ・グルニエ
『犬』 フリードリヒ・デュレンマット
『同時に』 インゲボルク・バッハマン
『ローズは泣いた』 ウィリアム・トレヴァー
『略奪結婚、あるいはエンドゥール人の謎』 ファジル・イスカンデル
『希望の海、復讐の帆』 J・G・バラード
『そり返った断崖』 A・S・バイアット
『芝居小屋』 アントニオ・タブッキ
『無料のラジオ』 サルマン・ルシュディ
『日の暮れた村』 カズオ・イシグロ
『ランサローテ』 ミシェル・ウエルベック
Author: ことり
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