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『悲しみを聴く石』 アティーク・ラヒーミー、(訳)関口 涼子

評価:
アティーク ラヒーミー
白水社
¥ 1,995
(2009-10)

女は、もはや意識もなくただ横たわるだけの夫に、初めて愛おしさを覚える。そして、自分の哀しみ、疼き、悦びを語って聞かせる。男は、ただ黙ってそれを聞き、時に、何も見ていないその目が、妻の裏切りを目撃する。密室で繰り広げられる、ある夫婦の愛憎劇。
圧倒的なラストまで瞬きを許さない、アフガン亡命作家による“ゴンクール賞”受賞作。

ぽたり・・・ぽたり・・・と生温かなしずくがかたくつめたい石を穿つ。
そんなイメージが脳裡にうかんで、闇にひびきわたるかすかな音に耳をすませ、息を詰めるようにして読みました。

せまくてなにもない部屋。マットレスに横たわる夫と傍らにすわる妻。銃で撃たれた夫の意識がもどることはなく、妻は夫の呼吸を数え、数珠をたぐりながらコーランの祈りを唱えつづけます。
やがて、妻は意識不明の夫にむかって罪深い秘密を打ちあけはじめ――・・・

感情を排し、事実だけをたんたんと描写するだけの冷ややかな文章。
夫の寝息と妻のつぶやきしか聞こえない怖ろしく張りつめた空気を、時おり大きな爆撃の音が切り裂きます。戦闘から逃れられないアフガンの人びとの‘日常’と、常に虐げられる立場にあった中東の女性たちの悲痛がうかび上がるそのたびに、心が凍りつくようなそんな気がしました。
生身の夫を神話のなかの「石」に見立てる妻。
どんどんと緊迫し、狂気じみていく部屋。
読むほどに暗澹とした思いがこみ上げる、深い悲しみと衝撃の物語でした。

(原題『Syngué sabour』)
Author: ことり
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