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『黒蜜』 小池 昌代

評価:
小池 昌代
筑摩書房
¥ 1,995
(2011-09-21)

子どもの世界、そこには感情の原型が生々しいカタチでむき出しになっている。恐怖、怒り、歓喜、悲しみの瑞々しい気持ち。
感情の原初に視線を注いだ掌編小説14編。

ぼんやりと、どこまでも不穏。
たとえば金魚鉢の底の、とろとろとにごった澱みのような短篇集。
ずうずうしい女の人も、凄みのあるおばあさんも、子どもたちのものうい目線のなかでゆっくりと苔むしていつまでも残る感じ。
生まれて初めてぶつかる物事を前にしたときの恐怖の感情、おののきながら進んでいくざわりと忘れられない感覚・・・とくに『姉妹』と『倦怠』のすばらしさといったら、それはちょっとおぞましいくらい。
ゆるやかに歪み、時おりちくんと突き刺さるちいさな棘・・・。
小池さんの周到に選びぬかれた一字一句には、いつもゾクゾクさせられます。

蝉の声がかまびすしい。空気がたぷたぷと波打ってきて、ああ、倦怠だ、とわたしは思う。甘美な幼年時代の夏に、わたしはいきなり放りこまれる。すると、本当の名前が戻ってくる。みるこ、そう、わたしはみるこ、九歳のまま、老いた少女だ。(『倦怠』)
Author: ことり
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