<< 『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』 ヒレア・ベロック、(絵)エドワード・ゴーリー、(訳)柴田 元幸*prev
『人魚ひめ』 H.C.アンデルセン、(絵)ヨゼフ・パレチェク、(訳)石川 史雅 >>*next
 

『みなも』 石田 千

評価:
石田 千
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,728
(2011-07-01)

ついえてゆく愛、さざなみたつ心――。
とめどなく寄せては返す想いに目をこらし、愛の蜜から毒までをあまさず舐めつくしたうつろいの日々の物語。

この本をひらき、文字に視線を這わせることは、「読む」というより「たゆたう」というのに近い・・・。
詩のような、もしかしたら別れの手紙のような。長い長いひとりごとめいたお話。
うつろいゆく言葉の渦にただ身をまかせ、音のない淡い世界を浮遊する、そんなめくるめく感覚で文字をなぞりました。そうしてふいに出逢うどきりとするような美しい表現につと立ち止まり、見惚れながら。

ひとりぶんの茶をいれる。突き落としてきた過去は、ほかにも沈んでいる。薄いガラスの球には、逃げ道のない静かさがひとつ、もうひとつ、くるまれている。
開き終え、底にたまった茶葉は、どれも永遠をおびていた。夢中で見いるのは、かさなりたおれた茶の世界が、もうくつろいでいるからだった。さいごは、こうなる。ならば感情の揺らぎに立つうちは、思い出も現在のひとすみとなる。ようやく、過去といまをへだてる時報を聞く。

心のなかにどうしようもなく澱むよこしまさ、突き上げてくるような恋の痛み。
はかなく散り、深くもぐって、ただ静謐な時間だけが過ぎてゆきます。
Author: ことり
国内あ行(石田 千) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -