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『わたしは英国王に給仕した』 フラバル、(訳)阿部 賢一

中欧文学巨匠の奇想天外な語りが炸裂する、滑稽でシュールな大傑作。給仕人から百万長者に出世した主人公の波瀾の人生を、ナチス占領から共産主義へと移行するチェコを舞台に描く。

「これからする話を聞いてほしいんだ」――
語り手のみごとなまでのおしゃべりに、どんどん引き込まれてしまった小説です。
小柄な男(=「わたし」)がホテルの給仕見習いから百万長者へと出世していくさまが、エロティックでユーモラスなエピソードを積み重ね、語られていくお話。いったいどこまでがほんとうでどこからがほら話なのか・・・深刻さとばかばかしさのまざり具合が絶妙で、もの哀しいやら笑っちゃうやら。
そんな物語にチェコの世相が映り、政治が影を落とし、戦争が土足で踏みこんできます。「わたし」の出世に相反するように、状況は暗くはかなく歪んでいくけれど、哀しみさえもユーモアに変えてしまうカラリとした陽気さがとても素敵、そう思いました。
あと、文中にたびたび出てくる「信じられないことが現実となっていた。」という言葉。「今度はなにが起こったのですか?」なんて、つい身を乗りだして話に耳を傾けたくなってしまって、最後までうまく乗せられてしまったなぁ・・・。
人生の旨味と苦味がたっぷりつまった、フルコースの食卓のような小説でした。

(原題『OBSLUHOVAL JSEM ANGLICKÉHO KRÁLE』)
Author: ことり
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