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『そこへ行くな』 井上 荒野

評価:
井上 荒野
集英社
¥ 1,680
(2011-06-24)

夫婦同然に暮らしてきた男の秘密を知らせる一本の電話(『遊園地』)。バスの事故で死んだ母はどこへ行こうとしていたのか(『ガラスの学校』)。中学の同窓生達が集まったあの部屋の、一夜(『ベルモンドハイツ401』)。「追っかけ」にあけくれた大学生活、彼女の就職は決まらない(『サークル』)。引っ越し先の古い団地には、老人ばかりが住んでいた(『団地』)。貸しグラウンドの女事務員が、なぜ俺の部屋を訪ねて来るのか(『野球場』)。母の入院先に、嫌われ者の同級生も入院してきた(『病院』)。
行くつもりはなかった。行きたくもなかった「場所」へ――全七編収録。

女たちのなまなましい感情がうようよとたち込め、不透明によどんだゼリーみたい。
読んでいるとたまらなく息苦しくなっていくのに、でも、やめられない・・・そんないやな吸引力のある短篇集でした。
行ってはならない場所に、つい踏み込んでしまうような。

ありふれた日常がゆがんでいく様子。
誰かのささやかな悪意に、すこしずつ崩されていく‘砂の城’――脆弱な幸福。
優位かどうかはわからないが、幸福なのは知らない女のほうだろう。あの電話がかかってくる以前のほうが、今よりも私が幸福だったのは間違いないから。くぐもった声の女は、自分よりも幸福な女がいることに耐えかねて、電話をかけてきたのだろう。(『遊園地』)

どのお話も、濃密な澱みを煮つめに煮つめ・・・ぱっと開放する唐突なラストが待っています。そのつづきのいちいちに、ぼんやりと思いをめぐらせてしまった私です。
Author: ことり
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