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『薔薇くい姫 枯葉の寝床』 森 茉莉

自分のことにしか興味が持てない著者が、現実との感覚のずれに逆上して≪怒りの薔薇くい姫≫と化し、渾然一体となった虚構と現実が奇妙な味わいを醸し出す「薔薇くい姫」、男同士の禁断の愛を純粋な官能美の世界にまで昇華させた「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の三篇を収録。

『薔薇くい姫』は、いつも子どものように扱われ、心に怒りの種を秘めている魔利(茉莉さん)が、日常の小さな理不尽を独特の感性で描いていくエッセイふう小説。
自身の美学を主張しつつ、でもその外側から自分のことを俯瞰的にみつめ滑稽に描ききる、そんな彼女の姿が堪能できます。
魔利の現わそうとするものは大抵、わけのわからないものであって、ごちゃごちゃといりくんでいる。それでそのいりくんだものを、どうにかして現わそうと躍起になるから、表現はひどくしち面倒くさくなるのだ。
相変わらずお話があっちこっちへそれていく文章だけど、それもふくめてとってもおもしろかった。時間というものへの恐怖や、子供は天使であるという世間の考えへの反論など共感するぶぶんもたくさんあったし、そのくせ宴席での食事の量がものたりなくてよけいに空腹になった苛立ちが延々と綴られていたりして、そんな大人げなさ、食いしんぼうっぷりも可愛いのです。

あとの二篇は、美しい少年と中年男――『枯葉の寝床』はレオとギラン、『日曜日には僕は行かない』は半朱(ハンス)と達吉――の同性愛が織りなす耽美的小説。
文章のすみずみ・・長椅子(ディヴァン)だとか白鳩(ピジョン・ブラン)など、ルビのひとつひとつにまで茉莉さんの西欧趣味・美意識が息づき、言葉の装飾や色彩もこまやかで濃厚。あふれる香気にむせ返りそうです。キスシーンも圧倒的で、‘死’さえもこのうえなくロマンティックなものとして扱われています。
正直、こういうジャンルは好みではありませんが・・・、この華やかさ、儚さ、危うさは美少年をめぐる偏愛だからこそかもし出せるものなのだろう、そう思いました。
Author: ことり
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