<< 『ゴールデン・バスケットホテル』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織*prev
『幻影の城館』 マルセル・ブリヨン、(訳)村上 光彦 >>*next
 

『逆事』 河野 多惠子

評価:
河野 多惠子
新潮社
¥ 1,650
(2011-05-01)

人の生死は潮の満ち引きに同調すると、子ども時分に聞かされた。引き潮どきに逝った谷崎潤一郎。いわれに逆らうように「満ち潮どき」の死を択んだ三島由紀夫。相次いで逝った父と母、戦没した息子を思いつづけた伯母の死は・・・。
亡き面影をたどり、生と死の綾なす人間模様を自在な筆致で描きだす「逆事」ほか珠玉の全五篇。

『いのち贈られ』、『その部屋』、『異国にて』、『緋』、『逆事』。
14年間のニューヨーク生活にピリオドをうった河野多惠子さんが、帰国後はじめて書き上げたという短編集です。
淡々と描きだされていく日常生活のなかに、死そのものや逝ってしまった人たちの気配が濃やかに息づき、墨色のちょっと悍ましいような物語に誘われてしまいます。

河野さんの書かれる闇は、相変わらず果てがない。
その思わず足がすくむような感覚は、彼女の背後につらなる人生の重みからきているのでしょうか。

「夢に現われた故人が口を利けば、その故人はすでに生まれ変っている」(『いのち贈られ』)とか、「人は満ち潮どきに生まれ、干き潮どきに亡くなるという」(表題作)とか、茫漠としてふしぎにリアルな言い伝えが印象的でした。
ほんの小さなできごとが日常を歪め、彼岸の摂理や導きについてめぐらせる思い。物語が日常的であればあるほど、不穏な裂け目を際立たせ、心細さが増していくようです。
Author: ことり
国内か行(河野 多惠子) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -