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『森のなかのママ』 井上 荒野

画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた・・・。
なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とは――。

難儀で頑固ないずみ、のほほんと奔放な未亡人のママ、ママの取り巻きの男たち。彼らの織りなすいっぷう変わった日々の物語です。
無邪気で行動が読めない‘自由人’のママにふりまわされるいずみの暮し。おまけに死んだパパのかつての愛人まで登場する始末です。
こんなにも厄介なのに、でも物語はほわんほわんで、綿毛みたいにやさしい。
いずみの友だちも、ママを慕う男性たちも、みんなひょうひょうと気のいい人たち。
悲しみ、淋しさ、心の動揺・・・そんな負の感情をおもてに押しだすのではなく、日常のちょっとした場面やなにげない会話のなかにチラ、とかいま見せてくれる荒野さんの文章が好き。

ママがまわりの人を惹きつけてしまう理由がすこしずつ分かって嬉しくなります。
これまでの人生、ママにもいろんな葛藤があったはず。それらぜんぶ‘のほほん’でくるんで、誰も傷つけず、誰も責めず、ママはしずかに人生と格闘しているんだね。
「まあ、人生たまにはものすごくならないとね」
こんなセリフをふふふ、と笑いながら言えちゃうママが逞しくて恰好いいです。
Author: ことり
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