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『ピクニック』 ガリーナ・アルテミエヴァ、(訳)水野 典子、織田 桂子

評価:
ガリーナ アルテミエヴァ
未知谷
¥ 2,100
(2011-02)

『走馬灯』、『ピクニック』、『ユーザー』、『お誕生日おめでとう』、『クリスマスツリー』。
ロシアの女性作家が、現代の人びとの生活にひそむしがらみや軋轢をなまなましくシリアスに描き出した短篇集です。
もっとも私の心にのこったお話は、『お誕生日おめでとう』。

『お誕生日おめでとう』
息子が生まれたばかりのイリヤーに、叔父が語り聞かせる、かつての隣人女性・アンナの物語。
アンナは20歳で結婚。出産のために入院するが、産み落とした子供に会わせてはもらえなかった。そして数日後、子供はダウン症で知的障碍をもって生まれ、すでに亡くなったと告げられる。アンナはおなじ病室で母乳の出ない女性・アナスタシーアに代わり、彼女の子供に母乳を与えた。
アンナは離婚、その後再婚し健康な子供を産む。しかし、10数年経っても、彼女はいまだにまいばんあの時の子供の夢をみる・・・。

乾いた文章で淡々と語られていく闇のなかのショッキングな真実。つよく結びついた母子の奇跡が読み終えたあとも残光となって消えませんでした。
このほか、収められたどのお話もどんより重たい空気がたれこめ、このたびの大震災で疲弊した心にはちょっぴりキツかったのもほんとう。
でも、疑心暗鬼になったり後悔をくり返したりしながら、傷つけ傷ついて、それでも生きていく人びとの‘きっと誰もがもち得る弱さ’が哀しくて、抱きしめてあげたくなったのです。

(原題『ПИКНИК』)
Author: ことり
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