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『耳うらの星』 東 直子

評価:
東 直子
幻戯書房
¥ 2,310
(2011-02)

青い夜の沼地。蓮の花のうえを赤いタイツの少女が歩く、とてもきれいな装丁。
うつくしい言葉がちりばめられた、しみじみと沁みるエッセイ集です。

宮澤賢治、寺山修司、塚本邦雄、内田百痢∧翅執阿覆匹涼参里箴説からの抜粋・考察がたくさんで、歌人ならではのエッセイ。でも短歌に関するものばかりではなく、遠い日の思い出や現在の日常のお話もつまっています。子どもの頃の、幼い心をよぎる不安だとか疎外感は昔の私にそっくりなぶぶんも多くて、なつかしくも気恥ずかしいような気持ちで読みました。
鈍重だった少女時代を安房直子さんの童話集とともに過ごし、本が壊れたそのかわりに大人になった、という東さん。少女はやがて、鳥肌を「皮膚に浮かぶさみしい音楽のよう」だと感じ、年をとるということを「星の一部にふたたび戻るための、おだやかな準備期間」だと表現します。そうして「ほうじ茶をすすりつつ、干しいちじくをかじりつつ、とろとろと世界が終わりになるのなら、悪くない、と思う」のです。

各章の最後にはご自身の短歌が一句そえられていたりもします。
私が一ばん好きなのは、『夏を眠る』の章にあったこんな歌。
ゆうだちの生まれ損ねた空は抱くうっすらすいかの匂いのシャツを
夏のけだるさや淡い空気の色がよみがえって、好き・・・。
言葉のひとつひとつがやさしく澄んでいて、涼やかな気持ちになれるみずみずしい一冊でした。
Author: ことり
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