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『作家の口福』 恩田 陸 ほか

評価:
恩田 陸
朝日新聞出版
¥ 588
(2011-02-04)

贅沢なチーズ鱈、卵の黄身をとろっと絡めたトースト、はんぺんのオイルフォンデュ、白砂糖入りの七草粥、ハーブティーで淹れたココア、モンゴルのいのちを頂くヤギのシチュー・・・20人の作家が自分だけの“ご馳走”を明かす。読めば「美味しい!」を共感できる極上のエッセイ集。

20人の作家さんがそれぞれ4編ずつ、食について書かれたエッセイたち(元は朝日新聞土曜版に掲載されたコラム)が一冊の文庫になりました。
江國香織さんめあてで手にした本ですが、やはり私は彼女のエッセイが一ばん好きで、4編ともそれぞれすばらしいなあと思いながら読みました。
豆のさやからすじを取り除くときの「すじが、半透明の緑色の極細のりぼん状になって、ときにくるくるっとカールして、剥ける。」といういきいきとした表現(『春の豆』)も、インド料理店でのトイレの貼り紙にしばし見惚れるお話(『スパイスと言葉』)も、チャイナ・タウンのはずれでたべたとびきりおいしいお粥に思わず発した「わあお」という弛緩した歓声(『白い、やさしい、とろとろのもの』)も、愉しく陶然とした空気がそっくり伝わってくるのがうれしい。
そしてなんといっても『ほめ言葉 おいしいものを食べるわけ』の‘理由’がまったく江國さんらしくて素敵なのです。
私はその人(壺に納めてくれる、係の人)を本心から驚かせたい。できれば最初に息を呑み、それから目を細めて微笑んで、こんなふうに言ってほしい。
「贅沢なかただったんですね。ええ、お骨を見ればわかります。栄養がいきとどいています。新鮮な魚や肉を、たくさん召し上がってこられたんですね。好物はかわはぎ、小鯛、それにのどぐろあたりでしょうか。それにしてもこの白さ。なかなかいらっしゃいませんよ、こんなお骨のかたは。尋常ではない量の果物を召し上がったんですね。メロン、西瓜、桃、ぶどう、梨。お骨の一つ一つがみずみずしい。(中略)いやあ、いいお骨を拾わせていただきました。私、もう長いことこの仕事をしておりますが、こんなに幸福そうなお骨は見たことがありません」
このエッセイは、「だからきょうも全力で、おいしいものをたべるのです。」という一文で結ばれます。「全力で、おいしいものをたべる」・・・なんてシンプルですこやかなひびき。ため息がでるほど魅力的な一編でした。


■ この本の執筆者たち
恩田陸、絲山秋子、古川日出男、村山由佳、井上荒野、山本文緒、藤野千夜、川上未映子、森絵都、津村記久子、三浦しをん、江國香織、朱川湊人、磯憲一郎、角田光代、道尾秀介、池井戸潤、中村文則、内田春菊、中島京子
Author: ことり
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