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『いちばんここに似合う人』 ミランダ・ジュライ、(訳)岸本 佐知子

水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)――。
孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。

どこまでもふくれあがる妄想・・・滑稽で痛々しく、個性的な物語たち。
でもそれらがありふれた日常を、ありふれた孤独を描いていることが奇妙な落差を生み、心をきしませ、お話ぜんたいをつめたくほのかに照らしているようです。

隣りにいるのに、遠い。寄りそっているのに、淋しい。
不器用な魂たちが鎧をまとい、槍をふりかざして、絶望と闘っています。
どのお話にもそっと息づいている小さいけれどあたたかなもの。そのせいかしら・・・切なさとぬくもり、その両方を感じてしまいます。
誰かと繋がっているほうが一人よりも孤独な時があるってこと、私も知っているから。

心のなかにいまも残る途方もなく悲しい思い出に、もう一度光をあててあげることで心がゆっくり癒やされていくような晴れやかさ。孤独をまるごと肯定してくれる本は、淋しいのに勇気が出るから不思議ですね。
収められた16編のうち、私のお気に入りは『あざ』。
飛び散ったジャムとぶどう酒色のあざ・・・ささやかな情景さえも鮮やかに頭のなかで像を結びます。長いあいだ目をそらしてきたものにちゃんと向き合おうとする、その瞬間がとても好きです。

(原題『No one belongs here more than you.』)
Author: ことり
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