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『私の家では何も起こらない』 恩田 陸

この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・
小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。
血の海となった台所、床下の収納庫のマリネにされた子どもたち・・・いったいこの家にはどんな記憶が潜んでいるのだろう。幽霊屋敷に魅了された人々の美しくて優雅なゴーストストーリー。

アンティークの壁紙をまとわせたような、贅沢な装本。
一軒の「幽霊屋敷」をめぐる、美しく、ぞわぞわと不穏な連作短篇集。
目を覆いたくなるグロテスクな描写こそありませんが、「これはこういうことなんじゃないかしら・・・」そんな予感めいた怖さが心にからみついてきます。ひた、ひた、と不気味な気配だけが忍びより、でも核心からあと一歩のところではぐらかされる・・・お話をひもとけばひもとくほど不安感が煽られていくのです。
丘の上に建つ二階建ての古い家には、どこか異国の、もっといえば英国ゴシック調の独特の雰囲気がただよっています。
おぞましい歴史をいくつもかかえ、ひっそりと佇む家。
いまなお彷徨いつづける死者たちの気配と、哀しくて孤独なささめき。
アップルパイとか壜詰めのピクルスやジャム、ウサギの穴やロッキング・チェアなど本来なら可愛らしくて平和なはずのものものが、この物語のなかではひんやりとした湿りけを帯び、ひどく不吉に映るのも印象的でした。
呪われたお屋敷に長い長い時間をかけて積み重なった記憶が、そこに惹きつけられる人びとを惑わせ、曖昧でぼんやりとした空間を所在なげに揺れています。
Author: ことり
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