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『妄想気分』 小川 洋子

評価:
小川 洋子
集英社
¥ 1,365
(2011-01-26)

日常の中にある異界への隙間・・・
すこしばかり耳を澄まし、目を凝らすと日常の中にある不思議世界への隙間が見えてくる。そこから異界を覗くとき、物語が生まれる。著者の学生時代から現在までのエッセイを収録。

1991年から2005年までさまざまな媒体に掲載されたエッセイを集めたもの。
あれほどすばらしい宝石のような物語をいくつも紡ぎながら、「今でもやはり、小説を書くのが怖い。」と語る小川洋子さん。この本は、そんな謙虚な彼女の秘めやかなうちあけ話。

どの章も小川さんらしい質素で奥ゆかしい‘記憶の小部屋’なのですが、とりわけ印象にのこった章は、『動物たちの来訪』。
子どものころ動物園の小さすぎる水槽に閉じ込められたワニを見て、その心を慰めたくて、ワニが沈む暗闇に向かい絵本を読むようになった、というエピソード。
以来、自分はずっと同じことをやり続けている気がする。いつしか絵本が、自分の書く小説に変わっただけで、やはり胸の中に棲む来訪者に向かってお話を語って聞かせている。
うしなわれたものや不完全なものが生気をとり戻し、張りつめた静けさのなかで此岸と彼岸をつないでくれる彼女の小説・・・私はこれからも、頁をひらいては小川さんの柔らかな語り声に耳をすませることでしょう。
可哀想な、けれどひっそりと満ちたりた動物たちの隣りで。
Author: ことり
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