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『矢川澄子作品集成』 矢川 澄子

評価:
矢川 澄子
書肆山田
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(1999-09)

アリスとウサギの秘やかなつぶやき。
これまでの創作作品のすべてを収めた作品集。インタビューも収録する。98年刊の新装版。

98年刊のオリジナル版は、限定1000部、函入り、署名入りで当時12,000円で発売されたそうです。こちらは新装版ですが、いまやこちらも絶版で・・・先月ようやく美しい状態で入手した本。
『架空の庭』、『ことばの国のアリス』、『アリス閑吟抄』、『兎とよばれた女』、『はる なつ あき ふゆ』、『失われた庭』、『ファラダの首―未完詩・短篇』の7章から成り、総ページ数は701ページ。98年時点での、矢川さんの全創作をおさめています。

なんど読んでも心がちぎれるような痛さを感じるのは、『兎とよばれた女』。
わたしたちは喧嘩のできない夫婦でした。
わたしたちが対等でなかったなんて、月並みなことをおっしゃらないでね。つねに導くものと、つねに従うもの。つねにもとめるものと、つねにこたえるもの。この、つねにとつねにというところで、わたしたちは、世にもみごとな対等性を保ちつづけてきたのです」
執拗に芽ばえてしまう愛の結晶を、幾度もむりやり摘みとって、闇に葬りすてた時の気持ちはいったいどんなだったのかしら・・・。自伝的な小説に思わずかさね合わせてしまう、傷つきやすく柔らかな、血のにじんだウサギの心・・・。

対等でいたいと心から願ったのにかなわなかった矢川さんの「架空の庭」が、いつまでも亡霊みたいにつきまとっている、そんな淋しい影のさすお話の数々。
はじめて読んだ中では、残酷な少女の不敵な笑みがかいま見える『破局』、妹と夫の裏切りに立ち尽くす『秋』、タベサセテ、のひと言がエロティックにのこる『果物籠余談』などの短篇や、制約のなかでの無邪気なことば遊びが楽しい『アリス閑吟抄』、『みなそこのあいうえお』の詩たちが好き。
美しいことばの裏側にひっそりととじ込められた「不滅の少女」の胸のうちが、小さな鈴の音のようにチリチリとひびいて、いつまでも、かぼそく心に残るようです。


なんと、限定1000部のまぼろしのオリジナル版を入手できました!
貴重な貴重なサイン本です↓ <2011年1月追記>
Author: ことり
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