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『チーズと塩と豆と』 角田 光代、井上 荒野、森 絵都、江國 香織

評価:
井上 荒野,江國 香織,角田 光代,森 絵都
ホーム社
¥ 1,404
(2010-10-05)

10月放送の、NHK・BSハイビジョン紀行番組「プレミアム8」に登場する4人の女性作家が、それぞれヨーロッパのスローフードやソウルフードを求めて旅をし、その土地を舞台に書かれる短編小説アンソロジー。その小説は、ドラマ化され、番組に挿入される。
井上荒野はピエモンテ州(イタリア)、江國香織はアレンテージョ地方(ポルトガル)、角田光代はバスク地方(スペイン)、森絵都はブルターニュ地方(フランス)。

‘美食の町’と言われる土地を旅した作家たちが出逢った人びとや食事、そのもようをドキュメンタリーで放送し、その体験をもとに書き下ろした短篇小説を現地でドラマ化する、というなんとも贅沢な企画。
私は、4週にわたるすべての番組を見終わってからこの本をひらいてみました。彼女たちが見聞きしたいくつものエピソードを知ってから読んだほうが奥行きが感じられるかな?・・・そう思って。
じっさいに読んでみると、たとえば家族経営のレストラン、ハンドミキサーで潰すミネストローネ、自然がいっぱいのターブル・ドット、頭にビニールのキャップをかぶった女性、など実在の場所や料理、人物がお話のなかに自然にとけ込んでいるのが分かって、「この手はきっとあの人の手」「このスープはきっとあの時のスープ」なんてモチーフになった場面がふわーっと脳裡にうかんで、それは普段の読書ではけっして味わえないよろこびでした。

『神さまの庭』(角田さん)、『理由』(井上さん)、『ブレノワール』(森さん)、『アレンテージョ』(江國さん)。どのお話にも、‘そこ’から出てゆきたい――あるいは勇敢にも飛びだした――人が描かれています。
自分を縛りつける土地やきゅうくつな風習から、けれどどんなに遠く離れたつもりでも自分をかたちづくった食事の記憶からは逃れられない。頭では忘れていても、舌が、細胞が憶えている。そのことについて考えました。母の心のこもった手料理、祖父が丹精こめてつくった農作物・・・折にふれ、その味を思い出しては、私を泣きたくさせる食べ物の記憶たち。
番組のなかで江國香織さんが口にした「神は細部に宿る」という言葉。日々のささやかであたたかな食事にも、神さまは宿っているのかもしれませんね。
夫と食卓をかこむ時、私がつくった料理を食べてふたりの胃袋がおなじものでみたされていくことが、私を幸福にします。将来を憂うことももちろんあるけれど、そんな時でも、ううんそんな時こそ‘今日の食事’を大切にしたい、そう思います。
Author: ことり
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