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『マリアビートル』 伊坂 幸太郎

評価:
伊坂 幸太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2010-09-23)

酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴らを乗せた新幹線は、北を目指し疾走する!
『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。

正直、私は『グラスホッパー』があまり好みではなくて。
だからその続編であるこの本はおそるおそる読みはじめてしまったのですが・・・なにがちがったのでしょう、なにが変わったのでしょう。
物語の描かれ方なのか、それとも、私の感じ方のほうでしょうか。
なにはともあれ、とてもおもしろかったのです。

まさに疾風(はやて)のように駆け抜ける疾走感で、読み手を翻弄する先のみえないストーリー。
軽妙な会話と伏線の回収はもちろんキャラクターがものすごく立っているのですが、なんといっても憎たらしいのが、王子。殺し屋よりも邪悪で狡猾なこの中学生のせいで殺し屋たちの怖ろしさがかき消されてしまうほどなのです。「みんな騙されないで、このコの本性に早く気づいて!」なんて祈るように読み進めていました。
・・・あ、もしかしたら、私がこの本を楽しめた理由はそういうところにあるのかしら。
‘悪’であるはずの殺し屋たちが、息子思いだったり、仲間思いだったり、とことんツイていなかったり・・・とてもキュートに描かれていて、そんな描かれ方に心がすうっと自然に入り込めたのかもしれません。

このお話で私が一ばん好きだったのは、機関車トーマス好きの檸檬。相棒・蜜柑とのかけあいも最高におもしろくて、とぼけていて憎めなくて、大好き。憎まれ口ばかりきいていても、二人がほんとうはお互いを心底大切に思っていることがわかる場面、すごくよかったです。胸がきゅうっと熱くなりました。
ストーリーは私の願っているようにはぜんぜんすすんでくれなくて、ヤキモキしたり、しょんぼりしたり・・・でも読み手を裏切りつづけるこんな展開も、きっと‘伊坂ワールド’の魅力のひとつ。
ラストまで吸引力が衰えない、すぐれたエンターテイメント。おすすめです。

「俺は滅びねえぞ」 檸檬は口を尖らせる。
「滅びるさ。しかも一人で」
「死んでも俺は復活してやるよ」
Author: ことり
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