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『犬のしっぽを撫でながら』 小川 洋子

数に隠されている神秘と美しさ。その偉大な真理に向き合う芸術家ともいえる数学者たち。ひとつの作品を生み出すきっかけや、小説へのあふれる想い。少女時代の『アンネの日記』との出会いとその後のアウシュヴィッツへの旅。そして天真爛漫な飼い犬や大好きなタイガースのこと。日々の中の小さなできごとや出会いを、素晴らしい作品へと昇華していく小川洋子の魅力あふれる珠玉のエッセイ。

小川さんの言葉が、気持ちが、音もなく降りつづく雨みたいにすうーっと私のなかに沁みこんで、あまりの心地よさにちょっとびっくりしてしまったエッセイです。
「世界は驚きと歓びに満ちている・・・」
そんなふうに感じられる‘心’がうつしだす、ありふれた日常のひとこま。やさしい言葉でつむぎ出されていく、いくつものエピソードたち。
最近、生きている人より死んだ人のことを考える時間の方が長くなった、と語る小川さん。彼女の小説を読むといつも心が透きとおり、死者たちと囁きを交わしているような気持ちになるのは、彼女自身がとても真摯に‘彼ら’の声に耳を傾けて書かれているから、なのですね。

人はただ、目に見える、手で触れる現実の世界のみに生きているわけではありません。人は現実を物語に変えることで、死の恐怖を受け入れ、つらい記憶を消化してゆくのです。人間はだれでも物語なくしては生きてゆけない、私はそう思います。
有限を生きる人間が、その悲しみを受け入れる時、かたわらにあって、その人をそっと見守るような物語。そういう小説を書きたいと思っています。
Author: ことり
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