<< 『軽いめまい』 金井 美恵子*prev
『もものき なしのき プラムのき』 ジャネットとアラン・アールバーグ、(訳)佐藤 凉子 >>*next
 

『おとぎのかけら―新釈西洋童話集』 千早 茜

幼いころ、きっと誰もが親しんだ西洋の童話たち。
それらが現代ふうにアレンジされ、たっぷりの棘とエロスをまとい、生まれ変わった姿で届けられました。
可愛らしいおとぎ話すら、千早さんはとろりと溶かしてこんなにもざわめきをはらんだ物語にしてしまう。忌まわしいほどに美しく歪んだ世界は私をみるみる惹きつけ、目をそらすことを赦さないのです。禁じられた、甘い魅惑の毒りんごみたいに。

『迷子のきまり』(ヘンゼルとグレーテル)、『鵺の森』(みにくいアヒルの子)、『カドミウム・レッド』(白雪姫)、『金の指輪』(シンデレラ)、『凍りついた眼』(マッチ売りの少女)、『白梅虫』(ハーメルンの笛吹き男)、『アマリリス』(いばら姫)・・・ベースとなる物語のすじをほんのりとにじませつつ、怨念や嫉妬がうずまく秘めやかな7つの短篇。心の温度が少しずつ下がっていく、そんな冷気を感じます。
夜の闇、カラスの大群、びっしりとたかる虫。
香水や果実の甘さにまじって鼻をつく、生々しい体液のにおい。土と黴のにおい。
視覚から嗅覚から、私を脅かすさまざまなものたち。
そしてなにより私をぞくりとさせたのは、お話の主人公たちが――年若い青年から幼女にいたるまで――、世間を枠の外側から見透かすように眺めていること。ひややかな笑みさえうかべて。それがたまらなく不気味で、うすら怖かったのでした。

あまりの残酷さに悪寒が走った『カドミウム・レッド』、唯一気持ちが柔らかくほぐれた『金の指輪』、卑猥で頽廃的な小部屋での一部始終『凍りついた眼』のお話が、とくに印象にのこりました。
きゃしゃな細工の手鏡をいくつもあしらったようなロマンティックな装丁も、読み終えたあとではどこか妖しげにうつります。
Author: ことり
国内た行(千早 茜) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -