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『ホリー・ガーデン』〔再読〕 江國 香織

もう、大好き大好き大好き・・・。
はじめて読んだのがまだたった4年前だなんて、信じられない・・・。
お話のなかの台詞がふっと日常生活で口をついてでちゃうほど、何度も読んでしみついてしまったこの本。よく知っているお話を読むというのは‘安心’なことであるのだけれど、それでもふいにこちらを見透かすように私をつきさす鋭い一文・・・まったく、いい小説というのはなんど読んでも飽きることがないのです。

頑固なまでに過去に篭城する果歩と、妻子ある恋人と束のまの逢瀬を愉しむ静枝。
女子校時代からずっといっしょだった果歩と静枝の、アンバランスな日常の物語。
私はいまでこそ過去に篭城することはないけれど、この本を読むとつい果歩にかさねてしまって、過去をふり返るまい、と必死だった‘あの頃’がよみがえります。
ある日砕々に壊れてしまった、水の中のように親密だった愛の生活。彼の記憶は遠くにおしやってきたつもりなのに、ちょっとしたきっかけでまたすぐに自分のそばに戻ってきてしまうこと。匂いも感触もぬくもりもすべて手元に戻ってきて、自分のまわりにまとわりついてしまうこと。
おゝ これは砂糖のかたまりがぬるま湯の中でとけるやうに涙ぐましい
日々を穏やかに暮すこつは、何も考えないことだ。果歩はそう考えています。大事なのは考えないことだ、と。
ほろほろと少しずつ崩れゆく砂糖のかたまりのような日々。ほの暗くて、少し甘くて。だけどどんなに「考えない練習」をしてもちっとも上手くならない果歩を、私はたまらなくいとおしいと思うのです。

――私の大好きな描写。(‘日々の余分’のかけらが彩る世界観がほんとうに好き)
中野が「どんぶり」の紅茶をごくごく飲むところ。果歩のつくる家庭的な料理(たとえばある日の献立は、鳥肉と長ねぎの生姜煮、鰹節をからめた炒り玉子、トマトとグリンアスパラのサラダ、豆腐と絹さやのおつゆ)。一人で乗るロマンスカー。桃を食べたあとずっと指先にのこる匂い。くぷうーっ、くぷうーっと鳴る呼び出し音。果歩が手のひらでつつむようにフキの頭をなでるところ。なんだかんだ言って、静枝が果歩のことを「自慢の親友」だと思っていること。中野と歩く、夜の帰り道・・・
「私がいま中野くんにどうしてほしいか、ほんとはちゃんとわかってるんでしょう?」


江國香織さんの朗読演奏会に出かけました。
サイン本です↓ <2017年12月追記>
Author: ことり
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