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『菓子祭』 吉行 淳之介

銀座のフランス料理店で対座する三輪と景子。事情があり、彼は彼女の幼少女期を知らないが、35歳齢の違う実の父娘である。景子が中学生になって、月に一度会って夕食を共にしている。そうした父娘の眼前に、黒服のボーイ長が用意したのは三つのワゴンに並べられた満艦飾のケーキであった。・・・モノクロームの世界に侵入してくる原色の恐怖をつたえる表題作。短編の名手・吉行淳之介による純文学・奇妙な味の小説21篇を収める作品集の文庫版。

現実と夢のはざまを自在に行き交い、淳之介さんが描きだす「奇妙な味」のショート・ショート。
はっと気づいたとき、もうすでにまぎれ込んでいる奇妙な空間――
いろんなタイプの短編がとりどりにつめ込まれたこの本で、私がとくに好きだったのは、『あいびき』と『待つ女』のお話です。『あいびき』はなんともいえないブラックなユーモアが、『待つ女』はお話にたち込めるエロティックさとせつない女心がたまらなくて、心にのこりました。ほかにも、『寝たままの男』、『菓子祭』、『死んだ兵隊さん』、『サンタクロース』、『扉のむこう』などが好き。
どれもとても短いお話だけれど、男女の人間もようが濃やかに描写され、‘身体(の一部)’や‘食べもの’には色や匂いがきちんとあって視覚や嗅覚が刺激されます。簡潔でありながらも美しくて艶っぽい、そんな彼の文章が堪能できます。
Author: ことり
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