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『さすらいのジェニー』 ポール・ギャリコ、(訳)矢川 澄子

評価:
ポール・ギャリコ
大和書房
¥ 2,484
(1983-01)

目覚めたとき、まっ白な猫になっていた、8歳の少年ピーターのお話です。
それとは気づかないばあやに雨のそぼ降るロンドンの町へ放り出されてしまった白猫ピーターは、姿は猫でも心は人間の男の子のまんま。無情な人間たちに追われ、いじわるなボス猫と渡り合い、傷ついて――でも、やさしい雌猫のジェニーと出逢い、愛と冒険の旅にでるのです。

大の猫好きで知られるポール・ギャリコさんの、すてきで楽しい大人の童話。
このお話一ばんの魅力は、なんといっても孤高の雌猫・ジェニーの佇まいです。
気位が高く、由緒正しき血統と誰にも所有されない自分に誇りをもち、そしてなにより愛情深い。凛としなやかな身のこなしのジェニー。そんな彼女にピーターが、ミルクの舐め方からねずみの捕り方、食後の身づくろいのしかたまで、猫界の手ほどきをうける場面が好き。(だって、私まで猫になってしまい、ジェニーに教えてもらっているみたいな気持ちになるんだもの!)
「こんなふうにして、まずからだをまるくして横ずわりになって半分寝そべるようにして、もうちょっと姿勢を低くしてごらんなさい。そう、それでいいの。右足をうんとふんばって、左足はもうすこし胴に引きつけて、じゃまにならないようにするの。そこよ。ほうら、からだがしぜんとカーブして、ちゃんととどくようになったでしょ。そうやって背中と腰の左半分をすっかりなめたら、つぎは反対向きになって、同じことをすればいいの」
その後2匹は船に潜り込み、ジェニーの故郷・グラスゴーを目指します。とちゅう死と隣り合わせなこともあって、このお話はたしかにドキドキと胸おどる冒険譚といえますが、でもけっしてそれだけではない、なんとも甘やかな哀しさが最後に心を濡らしてゆきます。男の子と雌猫の、時空を超えたすばらしい愛のファンタジーです。

なお、『ジェニィ』というタイトルで訳者ちがいの本も出版されています。
私個人は、矢川澄子さんのなめらかな訳文の優雅なひびきが感性にぴったりで、挿絵も素敵なこちらの本をえらんでよかったと思いました。

(原題『JENNIE』)
Author: ことり
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