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『余白の愛』 小川 洋子

評価:
小川 洋子
中央公論新社
¥ 620
(2004-06)

耳を病んだわたしの前にある日現れた速記者Y。その特別な指に惹かれたわたしが彼に求めたものは・・・。記憶の世界と現実の危ういはざまを行き来する。幻想的でロマンティックな長篇。瑞々しさと完成された美をあわせ持つ初期の傑作。

優雅にペンを操る指の戯れ、耳鳴りを発しつづける壊れた耳・・・
かすかな音のみがゆるされた、うすい膜に覆われたような空間で、指と耳に焦点をあてた美しい物語がすすんでゆきます。
しずかにしずかに世界をゆがめ、艶かしく私をみたす‘閉じられてしまった記憶’。
町じゅうが雪で閉ざされていくように。あるいは、かたちなきものにかたちを与え大切にしまい込まれたコレクションのように。それはこれから先誰にも侵されることなく、きちんと守られていくのでしょう。・・・美しく、完ぺきな佇まいで。

このお話を読んでいる間中、川端康成さんの『片腕』のイメージがずっと脳裡にありました。夢のように幻想的で、甘やかな官能をおびたふたつの‘閉じられた’世界観が、私にはとても似通っているふうにうつったのです。
「わたしの耳のために、あなたの指を貸してもらえませんか」
Author: ことり
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