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『怪訝山』 小池 昌代

評価:
小池 昌代
講談社
¥ 1,785
(2010-04-27)

『怪訝山』、『あふあふあふ』、『木を取る人』を収めた中篇集。
もう若くはない男女がついと足を踏み入れていく日常のひずみが、官能的な妖しさをたたえた言葉たちで綴られていきます。

とりわけ印象的だったのは、表題作。いかがわしい仕事をしている主人公(イナモリ)が、伊豆の旅館で野卑な仲居・コマコとまじわる奇妙な安息の物語です。
倒木、耳鳴り、臓物の炒め物、金魚、軍服の幽霊、廃屋、洞窟・・・すみずみにまで不気味なほどの命が吹き込まれ、ナマナマとぬめる文章。土と草の匂い、憑かれたような荒々しい性交。
おろおろと、いつもなにかにすがりついて生きているイナモリですが、そんな彼のなかにもけっして飼い慣らせない野蛮な獣が揺れています。人間本来の野性、その衝動が細やかに描かれていて、心ざわめく一編でした。

デンと無邪気に、身体ぜんたいで誘ってくるコマコに私まで気圧されそう・・・。
「あたしはもう妊娠しないよ。ヘーケイしたから。ヘーケイすると、女は山になるんだよ。深い野山さ。(中略)わけいって、わけいって、深く入っておいで。さあさあ、おいでよ、どんどんなかへ。もうあたしは産まない。突き当たりさ。突き当たったところの、山の入り口さ」
Author: ことり
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