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『猫とねずみのともぐらし』 町田 康、(絵)寺門 孝之

むかし、猫とねずみはいっしょにくらしていました。
ところが、いまや、猫はねずみを見ると追いかけずにはいられません。
なぜなら、こんなことがあったのです――。

あのパンクな町田さんが絵本を書いた? 同タイトルのグリム童話をもとに創作?!
いったいどんなおはなしになったのやら、と興味津々で読んでみたら・・・、くすくす。案の定、グリムがすっかり‘町田ワールド’になっていました。

ねずみにだまって、ふたりで買ったおいしい油をひとりでうまうまなめてしまった猫。
「私どもに食べ物を恵んでくださいませんか」 猫とねずみは、白馬にまたがった王子さまや、カエルにキスする王女さまや、美しいマリアさまなど、慈悲深い(はずの)人びとにつぎつぎにお願いします。けれど誰も助けてはくれないのです。
「マリアさま。お願いしま・・・」
みなまでいう暇がありませんでした。
「いま忙しい」
マリアさまはそれだけおっしゃると、もの凄い早さで森に駆け込んで行かれました。

ねずみとの約束をやぶった猫の負い目、やぶられたねずみの怒り・・・。心のなかに木枯らしが吹くような乾いた間、そして思いがけないところから急転する人生・・・。
いっけんメルヘンティックなのによくみるとおぞましい、そんな深みのある青い絵は町田さんの本の装画でおなじみの寺門孝之さんが手がけられています。
王子さまの青い瞳は空洞だし、十字架は心細いほどに不穏だし、マリアさまはマリアさまでなくなっちゃう――なんとも過激でなんとも皮肉。
「おとぎ話」の概念をくつがえす、彼ららしいトンデモ絵本です。
Author: ことり
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