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『オー!ファーザー』 伊坂 幸太郎

評価:
伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,680
(2010-03)

「由紀夫、一人っ子じゃなかったっけ?お母さんとお父さんと、三人じゃないの?」
「母親と父親と俺の、六人暮らし」
高校生の由紀夫には、なんとお父さんが4人!
みんなそろって、ひとつ屋根のしたに暮らしています。
由紀夫を身ごもったとき母の知代(ともよ)は四股をかけていて、知代にメロメロだった彼らは、全員が知代と結婚し、由紀夫の父になることを決めたのでした。

チンピラみたいな風体でギャンブル好きの鷹さん、
女の人をあっというまに虜にしてしまうプレイボーイの葵さん、
スポーツ万能の中学教師・勲さん、
思慮深く落ち着いていて、博学の悟さん。

お父さんは4人とも個性にあふれ、由紀夫を自分の息子と信じ(結果がこわいので、DNA鑑定はやらない主義)、心配し、干渉します。得意分野がそれぞれ異なる彼らが由紀夫にさずける格言めいたセリフたちの、いちいち恰好いいこと!
由紀夫はほんの少し冷めたところのあるフツーの男の子だけど、4人もの父親からたっぷりの愛とたくさんのいい影響をもらっているのが分かります。いつも不在の知代さんが、由紀夫と4人の夫たちをどこにいてもシッカリ愛していることも。
そしてこんなにも独創的で厄介な設定なのに、父親どうしがいがみ合う描写がひとつもでてこないのも素敵だったな〜・・・。父親たちひとりひとりが知代さんと由紀夫を思っていて、そんな同志でつながれた彼らは、愛する妻子を守るための‘共同体’なのでしょうね。4人がひとしく由紀夫の「父」であるところがとてもほほえましく、そしてうらやましくもあった私です。
物騒な事件に巻き込まれはするけれど、愛がいっぱいの家族小説。

あとがきには、これは『ゴールデンスランバー』以前に書かれたもので、伊坂さんの「第一期の最後の作品」だとありました。
新しいタイプのお話はたしかに読みたい。でも新しいものに挑戦しながら、時おりこんな痛快で爽やかなお話を書いてくれたら、私はうれしいです。
Author: ことり
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