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『『秘密の花園』ノート』 梨木 香歩

梨木香歩さんが、フランシス・ホジソン・バーネットの代表作『秘密の花園』について濃やかに読み解くガイド本。
ゆっくり読んでも1時間あれば足りるうすい冊子・・・でも中身は濃密です。描写されていない物語にまで思いを馳せる、そんな梨木さんの‘大好きな本にたいするアプローチ’がとても素敵。
「ここの、この感じ方は私とおんなじだ〜」とか、「ここまで深く読み込めるのかぁ」とか、『秘密の花園』は私も大好きなので、いろいろと感じ入りながら読みました。

メアリが秘密の庭のことをはじめて他人に――信頼できるディコンに――打ち明ける場面。長いあいだ閉ざされていた庭と長いあいだ閉ざされていた自分自身をかさね合わせ、わっと泣きじゃくる場面について、梨木さんがこんなふうに語られているのが心にのこっています。
何の場合でもそうですが、その「もの」を知るまでは、それがどんなものか、自分がそれを必要としているのかどうかすら分かりません。けれど、そういうものの存在を知ったとき、メアリが光というものの存在を認識した今、徹底的に不足していた栄養素に出会った消化器官のように、それこそが自分の必要とするものだと悟り、彼女の「光を求める力」、「生きようとする本質」が目覚めた、ここはそういう場面なのでした。
草や木が光にむかってぐんぐん枝葉をのばすように、すこやかに目覚めていくメアリの心。そうしてそれを読むことによって読み手のなかにもなにかとても大切なものが目覚めていく・・・きっと、人それぞれに。
私がはじめて『秘密の花園』を読んだのはもうずいぶん前ですが、当時幼かった私の心にめばえた柔らかな芽はいまもずっとあるような気がしています。ただ、日々のあれこれについまぎれて、見えなくなってしまうだけ。
ちいさな芽を見失いそうになったら、また『秘密の花園』の扉をひらいてみよう。
「自分の必要とするもの」に、目覚めよう。――いつでも、思い出せるように。

読み手が百人いるとすれば、百の主人公を持つ、百の庭がある。
(中略)
足を踏み入れたときの、「本当の故郷」に帰ったような気持ち!でもそこは冬の様相を呈しており、入った瞬間、あらかじめ決まっていたかのように、主人公は、自分の「なすべき仕事」を悟ります。それは自分の意思でもあり、同時に自分を通してついに何かを実現しようとする、多くの人々の意思なのかもしれません。
Author: ことり
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