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『膝のうえのともだち』 町田 康

評価:
町田 康
講談社
¥ 18,840
(2010-03-26)

書店で頁をめくった時にとび込んできた懐かしい猫たちの顔、顔、顔。
ココアでしょ、ゲンゾーでしょ、奈奈でしょ、シャアでしょ・・・あっ。ヘッケもいた!
すいよせられるように購入した猫写真集。

愛らしくせつなくて、時に慈愛にみち、時に透徹した猫の姿、まなざし。
町田家で時をすごした猫たちのさまざまな表情をとらえた愛嬌たっぷりの猫写真のあとには、書き下ろし短編小説『ココア』も。
これは泥酔し、道端で目覚めた時、トラほどもある巨大な猫ばかりが道を闊歩する不思議な世界にまぎれ込んでいた「私」の物語です。
見慣れた街、なのにそこは猫と人間の立場がすっかり逆転した世界だった――。
主人公の「私」は町田さんご本人、そんな描かれ方をしていることもあって、とりわけこの世界にまぎれ込んだ直後のうろたえぶりはなんともたまらないおもしろさ。言葉のチョイスがいちいち可笑しく、関西弁をしゃべる猫・・とくに「秋のパン祭り」のくだりなどはつっぷして笑ってしまいました。
けれどやがて、(本来の世界で)のら猫が人間たちからどれほど不当な扱いをうけているかが‘のら人間’になった「私」を通して描かれていくと心がシンとなり・・・かつての愛猫・ココアがでてくるシーンでは、涙があふれ出てあふれ出て・・・。
猫にたいしていつも敬意をはらい、語りあい、笑いあい、時に泣いたり悔やんだりしながら「一緒に生きてきた」彼だから、このような優しいお話が書けたのですね。もうほんとうにこの人は猫が好きで好きで好きでたまらないんだ、そのことがまっすぐに痛いくらい伝わってきて、そしてまた泣けました。

町田さんの猫エッセイ(『猫にかまけて』『猫のあしあと』)がお好きな方はぜひ。
この本を読んで、私は大好きだった町田康という人がまた一段と好きになりました。
Author: ことり
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