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『東京飄然』 町田 康

評価:
町田 康
中央公論新社
¥ 1,944
(2005-10)

旅に出たくなった。なぜか。理由などない。
風に誘われ花に誘われ、一壺を携えて飄然と歩いてみたくなったのだ。
町田さんがふと思い立ち、ちょらちょらと・・・じゃなかった‘飄然と’東京近郊を旅するエッセイ。しかし彼の飄然旅行はちっとも‘飄然’とはいかず、いつも失敗に終わってしまう・・・。

なにがおもしろいって、やはりそれは町田さんの視点。
「町田康」というフィルターを通して見たら、世間はなんて不条理だらけなんだろう!それはたんなる‘登り坂’でさえせつなくも絶望にみちた笑いに変えてしまう、そんな視点です。
地下鉄では迫害されたヤモリのような目で見られ、8本セットの串カツは自分だけ7本しかもらえず、入ったお店では「いらっしゃい」を言ってもらえない。旅先での出来事という出来事に、イチイチ目くじらを立てイチイチ根にもって(その小ささがなぜかたまらない)、思弁を並べたて、そこにあの独特のリズムと語彙が拍車をかけます。何度も何度も声をたてて笑ってしまったそれは、‘くつくつ笑い’などではなくて、存分の‘アハハ笑い’。「もう、なんでなん〜?この発想〜」(町田さんの本を読むとついつい大阪弁が出てしまう私)
鶴岡八幡宮はよっぽどの瀆神行為がないかぎりバチが当たらないその勝手きわまりない理由、壁ぞいにベンチ状になった隣のお客との境界があいまいな椅子にたいするくだらなすぎる妄想など、笑いのツボをこれでもかと突いてきます。

期待はどこまでも裏切られ、世の不条理をなげき、それでも最後はほんのかすかな期待を抱きしめつつ終わる・・・、笑いあり哀愁ありの町田さんらしいゆかいな旅エッセイ。おすすめです。
Author: ことり
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