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『椿姫』 デュマ・フィス、(訳)新庄 嘉章

評価:
デュマ・フィス
新潮社
¥ 680
(1950-12-06)

椿の花を愛するゆえに“椿姫”と呼ばれる、貴婦人のように上品な、美貌の娼婦マルグリット・ゴーティエ。パリの社交界で、奔放な日々を送っていた彼女は、純情多感な青年アルマンによって、真実の愛に目覚め、純粋でひたむきな恋の悦びを知るが、彼を真に愛する道は別れることだと悟ってもとの生活に戻る・・・。
ヴェルディ作曲の歌劇としても知られる恋愛小説、不朽の傑作である。

あ、この感覚・・・、と思いました。この感覚のする本はまちがいないわ、って。
すばらしい小説――ここでは私好みの、というニュアンスのほうが強いけれど――というのは、さいしょの1頁ですでに分かるものだから。

それは予感どおりの、なんとも美しくなんともかなしい物語でした。
ブランデーをたっぷりしみこませたケーキみたいに芳醇な、それでいて消えいりそうに儚い恋愛小説。香水や音楽、きらめくドレスやりっぱな馬車、パリ・オペラ座の優雅な光景・・・華やかな香気をまきちらしながら、息苦しいほど濃やかに、愛をめぐる心理たちが描き出されてゆきます。
愛しくて愛しくてたまらなくて、それなのにひっそりと身をひく愛・・・
結局、あたしはあなたを愛していたのです、アルマンさま。
マルグリットの気持ちがいたたまれなくて、切なくて、涙がぽろぽろとこぼれ出て、どうしようもなかったのです。アルマンの未熟さや、とり返しがつかなくなってはじめて真実を知る無念さも。

気品あふれるうす桃色と金色でかざられた美しい文庫本・・・そこにとじ込められている物語もまた、お酒のように豊かでお菓子のようにはかない完ぺきな美しさ。
およそ恋にまつわる幸福という幸福、絶望という絶望、いとしさもやさしさも憎しみも、すべてが織りこまれたお話は、私にとって忘れられないものになりました。

(原題『La Dame aux Camélias』)
Author: ことり
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