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『エスカルゴの夜明け』 蜂飼 耳、(絵)宇野 亜喜良

蜂飼さんの文章に宇野さんが絵をつけられた物語『エスカルゴの夜明け』と、はじめに宇野さんの絵があって、蜂飼さんが詩をつけられた詩画集『肉屋の娘』。
反対の道筋をたどって生まれたふたつの世界(どちらも食べることにまつわる内容になったのは偶然だとか。)が合わさり、独特の美しい世界をつくり上げています。

『エスカルゴの夜明け』
たくさんのエスカルゴをそだてている少女の家。おじさんは言います。「ぜんぶ、商品として売るんだからね、途中で食べちゃうわけにはいかないよ」
けれど少女は知っています。夜ごはんのあとのおそい時間、お酒をのみながら、おじさんがエスカルゴをこっそり料理して食べているのを――

宇野さんの描く憂いをおびた少女の姿にぽうっと心がそまるのを感じながら、「ローズマリーがつよく香って、わたしの鼻の奥に足あとをつけ・・・」とか、「男の子は、やわらかい石のようにうねる道にすいこまれ・・・」とか、「ふくろうのさびた声を聞きながら・・・」とか、ちいさなお話のなかにいくつも転がっている詩的な表現たちをひとつひとつひろい上げながら読みました。
ラストの頁、殻から上半身をぬるりと出して目をとじる少女の絵は、その奥に広がる深い深い闇にのまれてしまいそう。勝ち気な少女が放つ艶っぽい余韻にくらくら・・・。

『肉屋の娘』での言葉と絵のコラボレーションも最強でした。
よりそうように、時に背を向けあうように、からみあう美しい世界と世界。
私のお気に入りは、『春の心臓』、『栞』、『銀河』。
やりなおしはきかないが
やりなおすようなことなどなにもない
この世には (『銀河』より)
Author: ことり
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