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『善良な町長の物語』 アンドリュー・ニコル、(訳)伊達 淳

評価:
アンドリュー ニコル
白水社
¥ 2,835
(2009-11)

お人好しの町長が人妻の秘書に恋をした!
バルト海の沿岸、路面電車が走る小さな町に起こる奇跡とは?
守護聖人、占い師、サーカス団・・・ふしぎな語り口で魅了する、せつない純愛物語。

青い空、はてしない水平線、牧歌的な美しい町並み、カフェに香りたつコーヒー・・・。北欧の小さな町・ドットで、町民たちから善良な町長さんとして慕われているティボ・クロビッチが秘書のアガーテ・ストパックに恋をするお話です。
アガーテは人妻。セックスレスの夫婦生活になやめる彼女は、純朴な町長とランチをともにするようになり、どんどんとティボに惹かれてゆきます。
アガーテにそっくりな女性が描かれたポストカードを買い求め、愛のメッセージを贈ったり(このポストカードこそがこの本の装画に使われているベラスケスの『鏡のヴィーナス』)、アガーテの憧れの地でいっしょに暮らす夢を語り合ったり・・・それはそれはピュアでかわいらしいふたりの恋。
けれどもティボは彼女になかなか手を出さず、待ちきれないアガーテは夫の従弟でろくでなしの画家・ヘクターと関係してしまい――・・・

このお話がユニークなのは、語り手がこの町の守護聖人・ヴァルプルニア(髭をはやした聖女)であるところ。そして、前半こそ町長や町の人びとの日常が淡々と描かれていくのに、後半は一転してマジック・リアリズムめいた要素が加わり、幻想小説へと様変わりしてしまうところ。
町のカフェを営む自称「魔女の家系」のママ・セザールの呪文、幻のサーカス団・・・そしてアガーテは、なんとも信じられない「変身」を始めて・・・?!

春のようなかろやかさと、嵐のような激しさを秘めたファンタスティックな純愛小説。
純粋な町長の恋を応援するうちにずいぶん遠くまで流されてしまったなぁ・・・なんてちょっぴり遠い目の私。
読後には、壮大な夢をみた後のような、うっとりとしたため息がこぼれました。
「ぼくが辿り着きたいところはどこでもなくきみのそばなんだ。きみの他に誰がぼくが砂糖をいくつ入れるか知っている?」

(原題『The Good Mayor』)
Author: ことり
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