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『ページをめくる指』 金井 美恵子

評価:
金井 美恵子
河出書房新社
¥ 2,160
(2000-09)

絵本にたいする、あるいはそのつくり手への深い洞察が味わえる、とても贅沢な絵本エッセイ。
文学者だからこその視点・・・ひとつのおはなしのなかにあぶり出された作者の毒も孤独も矛盾も、けっして見逃したりせずに、単に可愛らしいだけではない絵本の魅力が金井さんらしいものうさとするどさで書きつけられていきます。
まるで、夢いっぱいのおもちゃ箱の中にほんものの金魚をみつけてしまったような、どこかそわそわと生々しい気持ちに襲われてしまった私・・・。
本そのものの作り方と、お話の内容自体からも、幼児向きと規定される類いのものであることも、容易に見てとれるのだが、しかし、『ぼくにげちゃうよ』の奇妙で無気味な魅力は、母親を(心理的な意味で)殺さなければ、母親以外の女性と性交することが出来ない、ということに気がつく年齢の読者にも、ある感銘を与えずにはおかないはずである。

とくに『ピーターラビット』のシリーズについては長く、5章にもわたっています。
本屋さんの児童書コーナーでおとなしそうな顔をしているこのシリーズが、「観念的なロマンティックな空想として生れたのではなく、小さな動物たちの行動や仕草や習慣の細かな観察を通して、まさしく、リアルなものとして描き書かれた」じつはトンデモナイ絵本であることが、独自の観点をまじえ綴られています。

絵本の頁をめくるエレガントな手指がうっとりと目にうかんでくる一冊。
一般的な固定観念にちっともしばられていない、奔放で、ごく対等なものとして絵本を見つめるまなざしが感じられるのがうれしい。
いわゆる「おさな心」というものを今でも保持している、などと言っているのではなく、それを読んだり見たりすることによって、まざまざとした鮮明さでよみがえって来る様々な時間や記憶を、ページをめくる指が経験するためには、生きてきた時間が必要だということだろう。絵本というものは、おそらく、何度も読みかえすためにあるのだ。


■ この本に出てきた読んでみたい絵本たち <読了メモは後日追記>
『タンゲくん』、『ミリー』→読了、『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話』、『ミツ』→読了、『100まんびきのねこ』→読了、『へんなどうつぶ』、『せいめいのれきし』
Author: ことり
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