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『ケッヘル』(上・下) 中山 可穂

評価:
中山 可穂
文藝春秋
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(2006-06)

モーツァルトの音楽にとり憑かれた音楽家の血をひく数奇な運命の少年・遠松鍵人(けんと)、過去の亡霊から逃げつづける女・木村伽椰(かや)、そして濡れたけものの気配を放つ美貌のピアニスト――。
モーツァルティアンのみを顧客とする奇妙な旅行社のツアーがいざなう、ケッヘル番号に導かれた愛と復讐の物語。

上下巻をいっきに読み終えて、身体の奥の深い深い水底からうかび上がってきたような、熱い熱いため息がこぼれる。
これまで、歓喜と絶望を綱渡りするような女同士の濃密な恋をあまた描いてこられた中山可穂さんの最新作。しかし今回はそれだけにとどまりませんでした。
伽椰の逃避行と鍵人の生いたちが交互に描かれていくなかで、いくつもの惨劇と秘められた過去とがどんなふうに繋がっていくのか・・・それを知るまでのドキドキとした戦慄、それから、胸をえぐられるような真相を知ってしまった後の喪失感(というのでしょうか?とにかくやりきれない思いです)は、なかなか言葉にあらわせません。またしても可穂さんの描く、絶望の淵から生まれた愛の深みに足をとられてしまった私。
彼女の小説にはいつも骨抜きにされてしまう。
体力を消耗してしまう。
動けない。

荘厳で敬虔なモーツァルトのしらべ。
このお話を読んでいる間中、私の脳裡でずっと鳴り響いていた『ディエス・イレ』。
音楽も恋も、もっと穏やかに幸福をもたらしてくれるものでもあるのに・・・。それでも激流にのまれ、にどと戻ってはこられない人生を選んでしまった彼らの物語には、『ディエス・イレ』の深い哀しみと激しい憤りがまざりあったような旋律がぴったりと副う、そんな気がするのです。
Author: ことり
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