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『小川洋子の偏愛短篇箱』 (編著)小川 洋子

評価:
小川 洋子
河出書房新社
¥ 2,052
(2009-03-11)

「この箱を開くことは、片手に顕微鏡、片手に望遠鏡を携え、短篇という王国を旅するのに等しい」
小川洋子が「奇」「幻」「凄」「彗」のこだわりで選んだ短篇作品集。

読みながら、小川洋子さんの抽斗にしまわれている秘密の小箱をこっそり覗き見ているような錯覚に陥りました。
ひとつひとつきちんと整理され、仕切りのなかでひそやかに囁きふれあう孤独な物語たち・・・。友達や家族にかくれて、彼女が暗がりでそっと愛でるための、そんな秘密めいたとっておきの小箱を。

正直、どれもあまりに湿度の高いお話ばかりなので、「私も好き!」と無邪気にさけぶにはちょっと躊躇ってしまうかもしれません。けれどこれらのお話たちをほかとは隔離し、大切にしまっていた小川さんを想像するとたまらなくいとおしくなりました。
ストーリーよりも、それぞれの一場面や文章表現そのものに陶然とすることも多く、理屈や常識などとり払ったうっとりとした世界が個々に広がっています。妻にかける「お前をここから見ていると、実に不思議な獣だね」(『春は馬車に乗って』)というひと言なんて最高にゾクゾク!
『兎』は『愛の生活 森のメリュジーヌ』で、『花ある写真』は『片腕』で、『雪の降るまで』は『ジョゼと虎と魚たち』でいちど読んだことがあったのですが、やはり『兎』は別格。なんど読んでもゾワっと身の毛がよだちます。
はじめて読んだなかで、一ばんのお気に入りは『件』。愕然としたのは『みのむし』。

――自分だけのとっておきの短篇箱。
私もつくってみるならば・・・江國香織さんの『デューク』と河野多惠子さんの『朱験』はぜったいに盛り込みたい!なんてつい妄想してしまった私です。

『件』 内田 百
『押絵と旅する男』 江戸川 乱歩
『こおろぎ嬢』 尾崎 翠
『兎』 金井 美恵子
『風媒結婚』 牧野 信一
『過酸化マンガン水の夢』 谷崎 潤一郎
『花ある写真』 川端 康成
『春は馬車に乗って』 横光 利一
『二人の天使』 森 茉莉
『藪塚ヘビセンター』 武田 百合子
『彼の父は私の父の父』 島尾 伸三
『耳』 向田 邦子
『みのむし』 三浦 哲郎
『力道山の弟』 宮本 輝
『雪の降るまで』 田辺 聖子
『お供え』 吉田 知子
Author: ことり
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