『不思議の国のアリス』〔再読〕 ルイス・キャロル、(訳)高橋 康也、高橋 迪

時計を持ったシロウサギのあとを追ってウサギ穴にとびこんだアリス。下へ、下へ、下へ。墜落したアリスが「ワタシヲノメ」と書かれたびんの液体を飲むと・・・。
アーサー・ラッカムの叙情的な幻想味溢れる絵を添える。一部を改訳。

またまた、ウサギ穴から「不思議の国」へ・・・。
もう幾度となく呼ばれてしまう「不思議の国」だから、今回は文章よりも挿絵メインで楽しみました。

こちらの本は、アーサー・ラッカムさんの挿絵が息をのむほどの美しさ。
ジョン・テニエル版のアリスよりちょっぴり大人びている感じ、表情も柔らかいです。フロックコートを着たウサギの毛並みもほわっほわの質感。そしてなんといっても森の木々や地面、家のなかの木目やもくもくとのぼる煙まで・・・細部までぎっしりと描きこまれた背景がすばらしいのです。
ラスト――アリスにトランプたちがいっせいに降りかかるあのラストシーンも、カードの嵐を避けようと身をよじるアリスのなんてかろやかなこと。
紅茶色のくぐもった空気のトーンが、狂気にみちた不思議の国をなつかしく幻想的な夢物語に仕立てあげ、いくら眺めても飽きません。

(『不思議の国のアリス』は、挿絵も翻訳もたくさんのヴァージョンがあります。
私はアーサー・ラッカムさん、金子國義さんの挿絵が好きです。訳文は矢川澄子さん版が一ばん好き。お気に入りをみつけるのも楽しいです)

(原題『Alice's Adventures in Wonderland』)
Author: ことり
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『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル、(絵)ユーリア・グコーヴァ、(訳)酒寄 進一

評価:
ルイス キャロル
西村書店
¥ 3,045
(1995-05)

ナンセンス空想物語として有名な「アリス」を、モスクワの若手絵本作家が描く。
本物と影の部分の逆転、奇妙な動物たちなど、ちょっとシュールな絵が続々と現れる。不思議な世界にとびこめる。クロス装の愛蔵版です。

砂糖菓子の男』のユーリア・グコーヴァさんが手がけられた「アリス」です。
かわいらしい甘さはずいぶん抑えてあって、グコーヴァさんらしいひんやりシュールな幻想世界が広がっています。ただ、絵じたいはとても美しく素敵なのだけど、私のなかの「アリス」のイメージとはちょっとちがうかな・・・?
100ページ以上あるヴォリュームで、大判絵本にはめずらしい完訳版。たっぷり物語をたのしみたい方にもおすすめの大人の絵本です。

(原題『ALICE IM WUNDERLAND』)
Author: ことり
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『アリスのふしぎな夢』 ルイス・キャロル、(絵)マルト・スガン=フォント、(訳)すえまつ ひみこ

評価:
ルイス キャロル
西村書店
¥ 1,944
(2010-05)

白ウサギがいっぴき大いそぎでかけてきて、上着のポケットから時計をとり出す・・・そんな不思議なシーンからはじまったアリスの夢のおはなし。ルイス・キャロルの世界を美しく幻想的な絵で紡ぎ出す。

ルイス・キャロルさんみずから、『不思議の国のアリス』を幼い子ども向けに書き改めたものがこのお話――英語原題は『The Nursery “Alice”』――なのだそうです。
ストーリーの流れはそのままに、ナンセンスな言葉あそびを省略し、よりいっそうやさしい語りでつむがれています。
そしてブラウンのインクでもしゃもしゃと描かれる、柔らかな布人形のようなアリス!
白ウサギもイモムシも、公爵夫人もぼうし屋もグリフォンも・・・ゴージャスなのに儚い甘さがあって、どこかお菓子じみた、繊細なおもちゃじみた愛らしさがふわんとまどろむ夢のよう。(私がとくに好きなのは、フランスのおしゃれな子ども部屋にころがっていそうなティーポットちゃん)
きらめく夏の昼下がり、お茶の時間にぴったりのハートフルな絵本です。

(原題『ALICE RACONTÉE AUX ENFANTS』)
Author: ことり
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『不思議の国のアリス』〔再読〕 ルイス・キャロル、(訳)矢川 澄子

少女の頃から、私の大好きなお話のひとつです。
ワクワク・ドキドキがいっぱいの不思議の世界にまよい込んだなら、小さな悩みごとくらい綺麗さっぱり忘れられるの・・・。

「たいへんだ、たいへんだ、遅刻しそうだ!」
チョッキを着た慌てんぼうの白ウサギを追いかけて、少女アリスがとびこんだ兎穴。ぐん、ぐん、ぐうんとすべり落ちて始まる摩訶不思議な物語。
からだがのびたりちぢんだり、水ぎせるをくゆらせているイモムシや、いつまでも終わらないお茶会、にんまり笑っては現われたり消えたりするチェシャネコ、そしてハートの女王さまとトランプの兵士たち・・・アリスはつぎつぎへんてこりんなものたちに出くわして、狂気にみちた不思議の国にもてあそばれてしまうのです。
うまくいかない意思疎通、かみ合わない会話。やきもきするようなじれったい世界にひとりぽっちでほうり出されてしまったアリス・・・。でも読んでいて悲愴感を感じないのは、アリスがとっても前向きで、かしこく明るい女の子だからなのでしょうね。自分の目でしっかり世界を見、自分なりにちゃんと考える――その見方だとかひとり言がまた可笑しいのですが――そんなアリスが愛らしくてとても素敵、そう思いました。

ワクワク・ドキドキのへんてこりんな旅を終え、アリスがもとの世界に戻ってこられた時には安堵の気持ちでほうっと大きく息をつきます。いつのまにかアリスといっしょにふりまわされてしまった私はもうこんな冒険こりごりだわ、とも思います。でも時がたつとまた頁をめくって出かけたくなってしまうのだから、ほんと不思議・・・。
きらめく金色の午下り。微睡みのたまゆらに、たった一人の女の子アリス・リデルに捧げられた物語。
その語りかけるような言葉には幼い少女への柔らかなまなざしがあふれていて、とりわけ私は物語をしめくくる最後の一文がすごく、すごく好きです。

おしまいに姉さんは、この小さな妹が、このさきいちにんまえの大人になったときのことを想像してね。アリスはそんな歳になっても、子供の頃のすなおでやさしい心をずうっと保ちつづけるだろう。そしておさない子供たちをあつめては、いろいろとおもしろいお話をしてやって、子供たちは目をかがやかせてききいるだろう。――そのお話のなかには、昔むかしのふしぎの国の夢物語だって、きっとまじっているだろう。そうして話し手のアリス自身、子供たちといっしょになって、そのたあいない悲しみに胸いため、またむじゃきな喜びに胸ときめかせ、そうやって自分自身の子供の頃や、たのしかった夏の日々のことをなつかしく思いだすだろう――と、そんなふうに思うのだった。

(原題『ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND』)
Author: ことり
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